計算ミスが多い子へ。計算ミスは「頭の中」ではなく「紙の上」で起きているかもしれません
テストが返ってきたあと、子どもたちからよく聞く言葉があります。
「うっかりミスでした」
「本当はわかっていました」
「計算を間違えただけです」
「やり方は合っていたんです」
たしかに、本当にたまたま間違えてしまうことはあります。
人間ですから、どれだけ気をつけていても、ミスがゼロになることはありません。大人でも、数字を見間違えたり、書き間違えたり、確認不足で失敗したりすることはあります。
しかし、同じような計算ミスを何度もくり返している場合、それは単なる「うっかり」ではないかもしれません。
毎回のように符号を間違える。
筆算の位がずれる。
途中式を書かずに、答えだけを書いて間違える。
小数点を打ち間違える。
分数の計算で、どこまでが分子でどこからが分母かわからなくなる。
自分で書いた数字を、自分で読み間違える。
こういうミスが何度も続く場合、そこには何かしらの原因があります。
そして、その原因は「頭の中」だけにあるとは限りません。
計算ミスは、紙の上で起きていることがあります
計算ミスというと、つい「計算力が足りない」と考えがちです。
もちろん、計算練習が不足している場合もあります。九九や基本的な四則計算があいまいな場合もあります。分数、小数、正負の数、文字式など、それぞれのルールがまだ身についていない場合もあります。
そういう場合には、基礎練習が必要です。
ただ、教室で子どもたちのノートやプリントを見ていると、計算ミスは必ずしも「理解不足」だけで起きているわけではないと感じます。
むしろ、紙の上でミスが起きていることがとても多いのです。
たとえば、式の意味はわかっている。
解き方も大きくは間違っていない。
どの計算をすればよいかも見えている。
それなのに、最後の答えが合わない。
そういうときにノートをよく見ると、途中式が小さく書かれていたり、数字が重なっていたり、筆算の位がずれていたり、マイナスの符号が見えにくくなっていたりすることがあります。
つまり、頭ではわかっていたとしても、紙の上で事故が起きているのです。
「わかっていたのに間違えた」は本当に多い
子どもたちが「本当はわかっていた」と言うとき、大人は少し疑ってしまうことがあります。
「本当にわかっていたのかな」
「ただの言い訳ではないかな」
「わかっていたなら、なぜ間違えたのかな」
そう思うのも自然なことです。
ただ、実際に子どもたちの答案や途中式を見ていると、「たしかに、考え方はかなり合っている」ということがあります。
最初の立式は正しい。
使う公式も合っている。
途中までは正しく進んでいる。
なのに、最後の計算でずれる。
こういう場合、子どもの言う「本当はわかっていた」は、完全な言い訳とは言い切れません。
問題は、わかっていたことを、正確に答案まで運べなかったことです。
勉強では、頭の中で何となくわかっているだけでは点数になりません。
紙の上に正しく書き、正しく計算し、正しい答えまでたどり着いて、はじめて点数になります。
つまり、学力には「考える力」だけでなく、「自分の考えを紙の上に正確に残す力」も必要なのです。
よくある「紙の上の事故」
では、紙の上でどんな事故が起きているのでしょうか。
よくあるのは、字が小さすぎることです。
数字が小さい。
符号が小さい。
小数点が見えにくい。
分数の線が短い。
筆算の数字が詰まっている。
こうなると、自分で書いたものを自分で読み間違えることがあります。
たとえば、6と0が見分けにくい。
1と7がまぎらわしい。
4と9が似ている。
マイナスの符号が、ただの横線なのか、分数の線なのか、よくわからない。
小数点があるのかないのか、自分でも判断しにくい。
これでは、正確に計算するのは難しくなります。
次によくあるのは、途中式が飛んでいることです。
本来なら、
1行目に式を書く。
2行目で変形する。
3行目で計算する。
4行目で答えを書く。
このように順番に進めればよいところを、途中を頭の中で処理して、いきなり答えを書いてしまう子がいます。
もちろん、暗算で正しくできるなら問題ありません。
しかし、計算ミスが多い子ほど、頭の中だけで処理しようとすると途中でずれます。自分では正しくやったつもりでも、どこかで符号を落としたり、数を写し間違えたり、計算の順番を間違えたりします。
しかも、途中式が残っていないので、あとから見直しても、どこで間違えたのかがわかりません。
これはとてももったいないことです。
筆算の位がずれる子も多い
小学生でも中学生でも、筆算の位のずれはよくあります。
たし算、ひき算、かけ算、わり算。
どれも、位をそろえることが基本です。
ところが、数字を小さく詰めて書いていると、位がずれやすくなります。
一の位、十の位、百の位がきちんとそろっていない。
小数点の位置がそろっていない。
わり算の途中計算が斜めに流れていく。
かけ算の2段目の位置がずれる。
こうなると、やり方を知っていても答えは合いません。
本人としては「計算方法はわかっている」のです。
でも、紙の上の配置が崩れているために間違えます。
これは、かなり多いです。
そして、こういうミスは「もっと集中しなさい」と言うだけでは、なかなか直りません。集中力の問題というより、書き方の問題だからです。
途中式が斜めに流れると、考えも流れていく
計算ミスが多い子のノートを見ると、途中式が斜めに流れていることがあります。
最初は左上に書いていたのに、次の行では少し右にずれ、その次ではさらに右にずれ、気づくと式全体が斜めになっている。
こうなると、式のつながりが見えにくくなります。
どこからどこまでが一つの式なのか。
どの計算を先にしたのか。
どの数字を次の行に移したのか。
どこで答えが出たのか。
自分でも追いにくくなります。
数学や算数は、考え方の流れが大切です。
一つ前の式から、次の式へ。
次の式から、さらに次の式へ。
順番に考えを進めていく必要があります。
ところが、紙の上で式がぐちゃぐちゃになっていると、考えの流れもぐちゃぐちゃになりやすいのです。
「うっかりミス」は、うっかりではなく習慣かもしれない
ここで大切なのは、計算ミスを子どもの性格のせいにしないことです。
「雑だから間違える」
「注意力がないから間違える」
「集中していないから間違える」
そう言いたくなる場面はあります。
もちろん、もっと丁寧に取り組む必要がある子もいます。集中していないときにミスが増えるのも事実です。
ただ、何度も同じようなミスをしている場合、それは本人の気持ちだけの問題ではなく、学習の習慣の問題かもしれません。
小さく書く習慣。
途中式を省略する習慣。
余白を使わない習慣。
筆算を詰めて書く習慣。
間違えた計算をすぐ消してしまう習慣。
どこで間違えたか確認しない習慣。
こうした習慣があると、計算ミスは起きやすくなります。
つまり、計算ミスを減らすためには、「気をつける」だけでは足りません。
ミスが起きにくい形を作る必要があります。
ミスを責めるより、ミスが起きる形を見つける
計算ミスをした子に対して、
「なんでこんなミスをしたの」
「ちゃんと見直しなさい」
「もっと気をつけなさい」
と言ってしまうことがあります。
気持ちはよくわかります。
せっかく考え方が合っているのに、最後の計算ミスで点数を落とすのは、本当にもったいないことです。
ただ、「気をつけなさい」だけでは、なかなか改善しません。
大切なのは、どんなときにミスが起きているのかを見ることです。
字が小さいのか。
余白が足りないのか。
途中式が飛んでいるのか。
筆算の位がずれているのか。
符号を書き落としているのか。
見直しができないノートになっているのか。
原因が見えれば、対策ができます。
原因が見えないまま「うっかりミス」で片づけてしまうと、次も同じミスをくり返します。
計算ミスを減らす第一歩
計算ミスを減らすために、最初に見てほしいことがあります。
それは、計算スペースです。
その子が、どれくらいの広さで計算しているか。
数字をどれくらいの大きさで書いているか。
途中式を残しているか。
1問ごとに、きちんと場所を分けているか。
筆算を大きく書けているか。
ここを見るだけで、かなり多くのことがわかります。
計算ミスが多い子は、問題そのものが難しいから間違えているとは限りません。計算するための場所が小さすぎるために、自分でミスを生み出していることがあります。
せっかく解き方がわかっているのに、紙の使い方で失点してしまう。
これは、とてももったいないことです。
次回は「計算スペース」を大きくする話です
今回の記事では、計算ミスが起きる原因について書きました。
計算ミスは、頭の中だけで起きているわけではありません。
紙の上で起きていることがあります。
字が小さい。
途中式が飛んでいる。
筆算の位がずれている。
式が斜めに流れている。
余白が足りない。
自分で書いた数字を、自分で読み間違える。
こうしたことが積み重なると、「本当はわかっていたのに間違えた」ということが起きます。
では、どうすればよいのでしょうか。
次回は、計算ミスを減らすための具体的な方法として、
「計算スペースを大きくする」
という話をします。
これは、とても単純な方法です。
しかし、単純だからこそ、すぐに実行できます。
そして、子どもによっては、これだけで計算の安定感が大きく変わることがあります。
計算ミスを責める前に、まずは計算する場所を整える。
次回は、その具体的なやり方についてお伝えします。

