月には届かない。でも、月を指差すことはできる
この2日間、アメリカンフットボールの話を書いてきました。
1日目は、トム・ブレイディ選手の話でした。
「アドレナリンをドバドバ出しながら、同時に死ぬほど冷静でいる人」
オードリーの若林さんが、そんな趣旨でトム・ブレイディ選手を称賛していた、という話です。
2日目は、アメフトというスポーツの話でした。
日本ではあまり馴染みがないスポーツだけれど、北米ではとても大きな文化になっている。
ダラス・カウボーイズのように、世界一の価値を持つスポーツチームもある。
スポーツは、ただの競技ではなく、地域の文化にもなる。
そんな話を書きました。
今日は、その最後です。
では、ぼくは何を目指しているのか、という話です。
ぼくは、講師としても、経営者としても、理想とする姿があります。
それは、ものすごく熱くて、ものすごく冷静な人です。
心の中には、ちゃんと火がある。
子どもたちに伸びてほしい。
できるようになってほしい。
自分の可能性に気づいてほしい。
そういう思いを、ちゃんと持っている。
でも、判断は冷静である。
今、その子に必要なのは何か。
どこでつまずいているのか。
何を変えれば伸びるのか。
どこまで待つべきか。
どこから声をかけるべきか。
どのくらい厳しくして、どのくらい見守るべきか。
そういうことを、落ち着いて考えられる人でありたい。
そして、できれば、少し抜けている人でありたい。
完璧すぎる先生は、少し近寄りにくいからです。
正しすぎる人。
立派すぎる人。
隙がなさすぎる人。
そういう人の前では、子どもたちは緊張してしまうことがあります。
もちろん、先生としてちゃんとしていることは大切です。
でも、少し笑えるところがある。
少し失敗するところがある。
少し人間らしいところがある。
そういう人の方が、子どもたちは話しやすいのではないかと思っています。
だから、ぼくの理想はこうです。
むちゃくちゃ心が熱くて、
むちゃくちゃ論理的で、
それでいて、少し抜けている人。
そういう講師でありたい。
そういう経営者でありたい。
ただ、これはとても難しいことです。
というより、ほとんど無理です。
熱くなれば、冷静さを失いやすい。
冷静になれば、熱量を失いやすい。
論理的になりすぎると、人の気持ちが見えにくくなる。
優しくしすぎると、必要な厳しさを失う。
厳しくしすぎると、相手の心が離れる。
本当に難しいです。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に出てくる、あの「デクノボー」も、ぼくにとっては理想の講師像の一つです。
ほめられもしない。
苦にもされない。
それでも、人のために動く。
自分が目立つためではなく、
自分が評価されるためでもなく、
目の前の人のために、必要なことをする。
そういう姿は、とても美しいと思います。
でも、これもまた、簡単にはなれません。
いや、簡単ではないどころか、ほとんど不可能に近いと思います。
「全く無理」とまでは言いません。
でも、「ほとんど無理」よりも、少しだけ難易度が高い。
そのくらいの理想です。
トム・ブレイディ選手のように、大舞台で心を燃やしながら、死ぬほど冷静でいる。
宮沢賢治の「デクノボー」のように、見返りを求めず、人のために動く。
どちらも、簡単になれるものではありません。
でも、理想というのは、そういうものなのだと思います。
すぐに届くものなら、それは目標です。
がんばれば達成できるものなら、それは計画です。
でも、理想は少し違います。
理想は、簡単には届きません。
たぶん、一生かかっても届かないかもしれません。
でも、方向を示してくれます。
月には到達できないかもしれません。
でも、月を指差すことはできます。
「あっちだ」と言うことはできます。
自分が進みたい方向を、ちゃんと示すことはできます。
そして、少しずつなら、そこに向かって歩くこともできます。
昨日より少しだけ冷静に。
昨日より少しだけ熱く。
昨日より少しだけ親切に。
昨日より少しだけ上機嫌に。
昨日より少しだけ、良い声かけをする。
昨日より少しだけ、良い授業にする。
昨日より少しだけ、良い教室にする。
そのくらいなら、できるかもしれません。
知求塾は、ものすごく大きな塾ではありません。
でも、理想を持つことはできます。
地域に、学びの文化をつくる。
子どもたちが、勉強のやり方を身につける。
できなかったことを、少しずつできるようにする。
保護者の方が、少し安心できる。
講師たちが、上機嫌に、好奇心を持って、親切に働く。
そういう場所を目指すことはできます。
もちろん、まだまだです。
理想には、まったく届いていません。
月どころか、まだ地面で靴ひもを結んでいるくらいかもしれません。
それでも、月を見上げることはできます。
そして、月を指差すことはできます。
「ぼくらが目指すのは、こっちです」と言うことはできます。
だから今日も、まずは上機嫌から始めます。
立派なことを言う前に、まずは上機嫌でいる。
大きな理想を語る前に、目の前の一人にちゃんと向き合う。
遠くの月を見上げながら、今日の一問、今日の直し、今日の声かけを大切にする。
そうやって、少しずつ前に進んでいきたいと思います。
月には届かないかもしれません。
でも、月を指差すことはできます。
今日も、知求塾は、まずは上機嫌からスタートします。
みなさまも、良い一日を。

