知求塾

会社の創業者には、どんな「特権」があるのか

2026年7月17日 | chikyujyuku

会社の創業者には、どんな「特権」があるのか

こんにちは。

愛知県刈谷市、東刈谷駅近くにある総合学習塾・知求塾の坂口です。

以前、生徒からこんな質問をされたことがあります。

「坂口先生は知求塾の創業者らしいのですが、社長という感じが全然しません。何か創業者の特権を使っているのでしょうか?」

当時、中学2年生だった女の子からの質問です。

「創業者らしい」という言い方も面白いのですが、私は知求塾を運営する合同会社ワンプラネットの創業者です。

法律上は合同会社の「代表社員」ですが、塾の中では、みんなから普通に「坂口先生」と呼ばれています。

今回は、塾の創業者にはどのような特権があるのか、少し考えてみたいと思います。

私が子どもの頃に考えていた「社長」

私も小学生の頃、将来は社長になってみたいと思ったことがあった気がします。

ただ、当時の私が思い描いていた社長は、今の自分とはかなり違いました。

スーツを着ている。

年齢を重ねている。

社会の酸いも甘いも知り尽くしている。

会社の大きな机に座って、部下に指示を出している。

そんなイメージです。

社長になるのは、長い社会経験を積み、課長や部長を経て、最後にたどり着く場所のように思っていました。

ところが、実際に会社をつくってみると、社長だからといって急に貫禄が出るわけではありません。

いつもの服で教室に来て、パソコンを開き、ブログを書き、教材を準備し、保護者の方からのご相談に対応します。

そのため、生徒から見ると、あまり「社長らしく」見えないのだと思います。

創業者に、偉そうにできる権利はない

では、創業者の特権には、どのようなものがあるのでしょうか。

考えてみましたが、偉そうにできる権利は、ほとんどないと思います。

むしろ、私の役割は「雑用代表」に近いものです。

会社を経営していると、税金や社会保険など、さまざまな負担があります。

保護者の方やスタッフから相談を受けることもあります。

要望をいただくこともあれば、こちらの説明不足や誤解によって、ご意見をいただくこともあります。

問題が起きたとき、最終的に責任を負うのは代表者です。

うまくいったときには、スタッフや生徒のおかげ。

うまくいかなかったときには、代表者の責任。

それが、経営者という仕事なのだと思います。

会社員だった頃の方が楽だったこともある

知求塾をつくる前、私は15年ほど学習塾の会社で社員として働いていました。

会社員だった頃と、創業者になった今を比べると、

「会社員だった頃の方が楽だったな」

と思うことがあります。

会社員であれば、会社が用意した仕組みの中で、自分の担当業務に集中できます。

しかし、創業すると、授業だけでなく、採用、給与、税金、広報、施設管理、教材の発注、トラブル対応まで、すべてが自分たちの仕事になります。

一方で、今の方が楽だと感じる部分もあります。

自分たちがよいと思う教育を、自分たちの判断で形にできることです。

どのような授業をするか。

どのような先生を採用するか。

どのような塾にしていくか。

責任は重くなりますが、自分たちの考えを実現できる自由があります。

社長だから、ものすごい給料をもらっているのか

質問をしてくれた生徒が想像していたのは、

「社長だから、ものすごく高い給料をもらっているのではないか」

ということだったようです。

しかし、残念ながら、そのようなことはありません。

大手塾の会社員だった頃よりは、多少増えた時期もあります。

しかし、驚くほど大きく増えたわけではありません。

学習塾という仕事は、もともと非常に利益率が高い業界ではありません。

教室を借り、教材を用意し、講師を採用し、授業を運営するには、多くの費用がかかります。

収入が増えたとしても、それをすべて自分の生活に使えるわけではありません。

会社同士のお付き合いもあります。

相談を受けて喫茶店に行けば、その費用を負担することもあります。

設備を直す必要もあります。

新しい教材やシステムを導入することもあります。

特に私が大切にしているのは、人材への投資です。

お金は、人と環境に再投資する

自分の生活に必要のない分まで、すべて役員報酬として受け取る必要はないと考えています。

その分を会社に残し、塾に再投資する。

または、授業料や講習費を抑えることで、保護者の皆さまに還元する。

そうした使い方をしています。

なかでも、人材への投資は非常に重要です。

学習塾の授業の質は、最終的には先生の質で決まります。

よい先生を採用する。

長く働いてもらえる環境をつくる。

研修を行う。

授業の準備をしやすくする。

先生が目の前の生徒に集中できるようにする。

こうしたことにお金と時間を使うことが、塾全体の質につながります。

お金持ちになることだけが目的なら、塾業界は向いていない

小学生、中学生、高校生の中に、

「将来はお金持ちになりたい」

と考えている人もいると思います。

その目標自体が悪いわけではありません。

ただし、お金持ちになることだけが人生の最優先目標であれば、学習塾という仕事は、あまり向いていないかもしれません。

塾の仕事は、授業が終われば終わりではありません。

授業準備があります。

教材研究があります。

保護者対応があります。

生徒一人ひとりの状況を考える時間があります。

長時間働いても、それがすぐに大きな利益になるわけではありません。

子どもたちの成長に関わることが好きでなければ、なかなか続けられない仕事だと思います。

かつて存在した、唯一の創業者特権

では、本当に創業者特権は一つもなかったのでしょうか。

以前は、一つありました。

誰よりも早く教室に来て、パソコンを開き、ブログを書いたり仕事をしたりしながら、教室のスピーカーで大音量のハードロックを流すことです。

授業が始まる前で、ほかに誰もいない時間でした。

これは少し創業者らしい特権だったかもしれません。

ただ、今ではワイヤレスイヤホンで音楽を聴くようになりました。

そのため、この特権もなくなってしまいました。

今残っている、小さな特権

改めて考えてみると、今も小さな特権がいくつかあります。

一つは、ほかの先生に、

「最近、こんなことを考えているんだけど」

と、ニュースや世間の話を聞いてもらうことです。

話を聞いてくれる先生は、少し困っているかもしれません。

それでも話を合わせてくれるところが、先生たちの優しさです。

もう一つは、仕事中に温かいコーヒーを飲めることです。

授業中の先生たちは、自由に飲み物を飲むことが難しい場合があります。

授業に入っていない時間にコーヒーを飲めることは、数少ない特権かもしれません。

ただ、こうして考えると、どれも社長らしい豪華な特権ではありません。

今の私の仕事は、環境を整えること

現在、私が特に大切にしている仕事は、スタッフの先生たちが授業をしやすい環境を整えることです。

教材を準備する。

必要な情報を共有する。

教室を使いやすくする。

生徒の状況を把握する。

保護者の方が困っていることを、いつでも相談できるようにする。

先生たちが、目の前の生徒に丁寧に向き合えるようにする。

自分がすべての授業を担当するのではなく、先生たちがよい授業をできる環境をつくる。

これが、今の私の主な仕事です。

代表者が目立つことよりも、現場の先生が力を発揮できることの方が大切です。

創業者の仕事は、自分のために会社を使うことではない

創業者というと、

「自分の好きなようにできる人」

という印象を持たれるかもしれません。

確かに、最終的な意思決定をする立場ではあります。

しかし、自分の好きなように会社を使うことが、創業者の仕事ではありません。

生徒にとって、よりよい塾にする。

保護者の方が安心できる環境をつくる。

スタッフが長く働ける組織にする。

会社を安定して存続させる。

そのために、自分の時間とお金とエネルギーを使う。

それが、創業者の役割なのだと思います。

スタッフが長く働ける塾にしたい

知求塾は、スタッフの定着率が比較的高い塾です。

これは、私たちが自信を持っていることの一つです。

先生が頻繁に入れ替わると、生徒も不安になります。

指導方針が引き継がれず、授業の質も安定しません。

長く働いてくれる先生がいることで、生徒の過去の様子や成長も共有できます。

塾の文化も少しずつ積み上がっていきます。

もちろん、まだ改善すべき点はたくさんあります。

それでも、先生たちが働きやすく、生徒と丁寧に向き合える場所を、これからもつくっていきたいと思います。

創業者特権よりも、創業者責任

結局、創業者に大きな特権があるかと聞かれれば、ほとんどないというのが私の答えです。

大きな権限はあります。

しかし、権限があるということは、同じだけ責任があるということです。

自由に決められる分、失敗したときにも責任を負わなければなりません。

創業者にあるのは、「創業者特権」というより、「創業者責任」なのだと思います。

先生たちが授業をしやすいようにする。

保護者の方が相談しやすいようにする。

生徒が安心して学べる場所をつくる。

そのための雑用を、誰よりも引き受ける。

少なくとも今の私にとっては、それが知求塾の創業者としての仕事です。